ぼくの仕事の半分は、平向付以下の小さなうつわだ。小向付を作り始めたころからその傾向が強くなっ
た。多くの型と絵柄を展開でき、また焼きの変化を得ることが出来るからだった。また、それを楽しん
で呉れるお客様の声も後押しをしてくれた。一昨年から、この手塩皿のシリーズが始まる。古い物の写
しの仕事がきっかけだった。新しい長石との出会いも変化を倍増させた。絵付けは、一皿一皿違うもの
を描くことで唯一の器になる。
絵付けが愉しくなったのは、良い筆を使うようになってから・・・。高崎の筆屋さんの物だ。それまでも
いろいろ試してはみていたが、想うような線が描けなっかった。なにしろその筆が手に入ったときには
うれしくて渦巻きばかりを描いていた。くるくるくるっと筆が勝手に描いてくれる。そのころはすでに
朝1時間の乱暴な写経で「日々の筆慣れ」は出来ていたので、次は絵柄のバリエーションを徹底的に頭
に叩き込むことに専念した・・・そんなことを4・5年はしただろうか。
今の筆も満足しているわけではない。もう少し腰の強い、それでいて穂先の柔らかいものが欲しい。
10/18追記