そもそも、焼物作り以前に《木を燃やす》ことが好きだった。といって特別な感情や衝動をもっていたわけではい。ごく普通に《焚火》を好むように・・・焼物≒大きな焚火・・・みたいな想いがあった。遡れば人間の本能。
窯のなかを揺らめいている《つくも神》めいた
焔に出会ったのは他でもない瀧口先生の所
での初めての窯焚きでだった。
ここでは、ぼくの窯焚きのことを書きます。
1) 上の写真は、胴木間という登り窯の一番最初に薪を焚き始めるところ。 ロストルでのもの。ここで、窯をゆっくり暖めるように5時間ほど焚く。20分~30分の間隔で薪を追加する。このときに1房2房で使う薪の小割(胴木間の1/2~1/3)を60束~70束分割っておく。
なんの因果か、こんな時間がすきだ。無心のようで、様々なことを考えているし案外、つぎに作りたいもが、ヒョイと想いつくのもこんな時だ。
薪割りは愉しい。
2)
下部のロストルの開口部で焚いている間は,上部の焚口の蓋は5時間程開けている。
それから、蓋を閉めて序々に1本2本と薪の本数を増やしながら、20時間ぐらいで1150℃あ
たりにする。このとき薪6本で7分間隔で焚いている。
この胴木間の中の手前に引き出し黒の茶碗が12~14個、置いてある。
焼き直しの物もこの頃は置く・・・釉薬の溶け具合いを見計らって2時間ほどかけて引き出す。
写真の縦の黒い棒は、先が少し曲げてある鉄の引き出し棒。中の茶碗を転がして内側に引っ掛け
て取り出す。
灰がかなり降るので、物によっては伏せて焼く。
3)
後は一気に1250℃(天井部}まで焚く。大体、
胴木間は30時間かける。一番温度の高い所は1300℃以上はある。
火前に置いた織部釉のものは、緑が抜けて灰釉のようになっていることが多い。「銅が飛んでしまう(揮発する)…」という。
胴木間が焼けると30分ほど窯を閉めて休む。
特に意味は無い。4,5時間でもいい。ひとねむり
して、また焚き始めるようなのんびりとしたカマダキをいずれしたいと思っている。
一房に移るときには煙突の下部にあるダンパー
を調整して(閉め気味)にして3~4分間隔で7本
の薪をくべる。
☆一房は構造(縦横のバランス)が悪いので窯詰めの状態が昇温に微妙に影響する。
8時間前後で1230℃(天井部)1300℃(床部)で焼き上がり。
4)
これは、2房の焚口から薪を入れるところ。
1房から移るころにはすでに1100℃位になっている。ここは、安定しているので楽に温度が上がっていく。
1200℃を過ぎたところで引き出し黒を出す。
ここは、主にグイノミを入れるが20個程度。
出し終えてから1270℃(天井部)まで持って行き窯焚きは、終了・・・。
2房は床部もほぼ同じ1270℃程度。 4.5時間で焼ける。
5) 窯を閉めてから3日~4日ほどで窯出しとなる。この間の冷ましの時間が焼物のことを考えずにいられる日・・・近隣の温泉に行くことが多い。
※ここに示した温度数値は、その場所の部分値で実際は火前、火裏でも50℃~100℃程度の温度差がある。
また、窯中央と側壁側では還元・酸化の度合いにも大きな差が生じている。