小さな窯である。幅約1間 長さ・約3間。この窯になってから20年ほど経つだろうか。当初は年3・4回は焚いていた。いまは2・3回になっている。別段怠けているわけではない。
★土つくりに以前より手間をかけるようになったことと、細工もの・型打ちのものが多いので必然的にそのようになった。
★焼成時間は40時間~45時間。薪の使用料は二百束程度。釉掛に4日~5日、窯つめに4日~5日かかる。窯焚き2日、冷却に3日、緑釉の膜をとるために薄い酸の液に2日浸け、その中和のために灰汁(アルカリ性)に一日浸ける。
★窯を焚くのが一番たのしいのはもちろんだが、案外窯詰のときの脳がパンクしそうな気分も嫌いではない。窯のなかの置く場所で詰める焼物の種類を変えるためだ。 問題はつねに境界域に発生する。
★この窯はレンガ(中古)3500丁ぐらいで 出来ている。棚板・柱・耐火モルタル・など含めてて35万円だった。最後に壁土を厚く塗り 仕上げた。一人で作ったから1ケ月程かかったろうか。
★初めのころは、窯への詰め方も焚き方も知らずに始めたので友人などとなんだかお祭り気分で始まり、七転八倒しながら勢いだけで焼いていた記憶がある。
★多治見の笠原というところに大前栄市さんという、窯造りの職人さんがおられる。滝口先生のところで一緒に窯を作らせてもらったことがある。丁寧で綺麗なしごとをされる方で窯の作り方をノートにとらせてもらった。小柄なひとで、少ししゃがれた高い声であの地方なまりで語る話は、真実味があって好きだった。「瀧さんはのう えりゃ~人やで・・・」なんて若いころの先生を知っているからこその話も聞いた。「壁とサヤの間は指3本は,いるはのう・・・」 その後、失敗のたびに窯のことを尋ね教えを請うた。