山での暮らしには欠かせないものに斧がある。よく使われるのが薪割り用の斧で柄の長さが大体120センチぐらいだろうか。
鉄製の打ちこみ部分が長さ15cm~20cmほど。この写真の斧は、もっと小振りな物で手斧といい、別名(よき)という。
大地震で被害のあった長野県の北外れ 栄村の古道具屋で15年ほど前に手に入れたものだ。未使用のようにキレイだったので更に砥石で研いで 刃を付けて切れ味を楽しんだ。山中で枝払いに使うのだと聞いている。柄は60cmほど有り普通は30センチ程度だから何かまた違う用途(小型だが薪割りに使った?)があったのかもしれない。
その頃から気にはなっていたのだけれど、鉄のところに(たがね)で打たれている4本の筋にどんな意味があるのだろうと(魔除け?)・・・思ってはいたがこの頃、答えが向うからやってきた。
僕が使っている(よき)には、 両面に4本の筋が打ってあるが、本来は片面は3本であるようだ。
表 Λにトと屋号が打ってある側(だと思う)に3本(本来は) 裏に4本である。
3本は、酒、米、塩で山の神などへの供物 4本は、太陽、水、風、大地の自然を 象徴する。
という説と、3本が、山の神、火の神、鉄の神を表わし 4本が「3を4ける」から 「身を避ける」という 危険な山仕事の事故から身を守るという、判じ物説。広辞苑には「斧立・よきたて」という言葉が採集されている。いわく、(伐木の前に山の神を祭る作法)とある。 実物が叶わぬなら代役でという 見立て の典型ともいえる。
中途半端だ・・・また 判らなくなった。・・・・・・・・・・いまは、調べることは造作もない。が、おそらくこの「よき」に限らず口伝えで語り継がれたことは、省略され、あるいは加飾されて・・・ときには誤解されて様々なバリエーションをもっているというところに行きつく。・・・・で「よき」という名にしても大言海では(木を横に切る斧だからヨキ) とか (4本の筋を4気と呼びヨキ)とか、ぼくはなんかもっと原日本人の言語に由来するちょっと魔術的な(猟奇的ではない)意味を含んだものではないかと楽しく考えていたのに・・・。あー残念。
鍛冶技術を伝搬した修験者(技術者集団)たちが呪法の何がしかを盛り込んでもおかしくはない。穀物の種を入れたり、骨壷になったりした陶器の壺にも同じような呪符が刻印されるのも、今のわれわれが考える以上に呪術的世界と深く関って暮らしていたことを伝えている。切実に八百万のカミに祈ったのだ・・・。そして「魔」や「邪」を避けるための工夫をこらしたのだと思う。
これは30年以上使いこまれた薪割りの斧。大分、柄が痛んできた。このマークは両面松葉です。一名「折れ松葉」・・・棟方志功の絵のサインは、ほぼ同じこの折れ松葉です。背守りにも使われていたような?・・・。
5/26追記
近頃頂いた手斧。 風呂焚きの薪などの小割に使っていたようです。
これは裏表3本3本の鏨(たがね)打ち。とても美しい形をしていると思いませんか?
頂いたときには、真っ赤に錆びていたので2晩薄い塩酸の液に浸けておいた。
それから たわし等で擦るとこのようにキレイに錆びが落ちる。
6/7 記 実はこれが栄村で手に入れたものでした<(_ _)>
この斧には、 3本 4本の印が入っている。