の べ お く り

この頃はあまり見ることのない葬送儀礼があった。【諸行無常是生滅法」「生滅々己寂
滅為楽」とそれぞれ書かれた幟が風にはためくさまは、故人の「想い」がその風土に融
け行く場にも見える。けっして豊かではなかったであろう山里のなかに生まれ、また土
に還る。(からだ)という器は、文字どうり燃え尽きはしたが、草葉の陰であるいは空か
らでも子孫を見守る祖霊となる。こんなに風に送られれば本望だろう。宗派・思想はどう
であれ、想いが想いを弔うのである。

ぎ お ん


辰巳橋を渡ると若者が俄か舞妓さんを撮っていた。まさしくここは虚々実々の世界のY字路である。

この辰巳橋界隈は祇園を訪れたことのある人は、一度は立ち寄るのではないでしょうか。白川の脇に
櫻の枝がたっぷりと張りだして花の時期はことのほか美しい・・・らしい。そして辰巳稲荷。
いつ通っても誰かが写真を撮っている。右に行けばお茶屋さんが並び、左に行けば中ほどに吉井勇の
歌碑が建っている。

        かにかくに祇園はこひし寝るときも 枕の下を水のながるる

何てことはない遊び人だった吉井のしみったれた句にしか思えんけど・・・なんていったらしかられるか?
単なるヒガミだね。

志功が板画にした流離抄には、いい句があるのにね。

             夕ざれば狩場明神あらわれむ
           山深くして犬の聲する    《右の板画の句》

【・・・「ゴンドラの歌」もそうだ。 ♪命短し恋せよ おとめ・・・♪】

           山に問う山は答えず山をゆき
                  山のこころをいまださとらず

この句は岩田慶治さんがどこかで引用していた気がする・・・記憶違いか・・・。

京都市考古資料館

京都市考古資料館の特別展示「三条せともの屋出土茶陶 ひょうげた器」を観に行った。・・・満足‼・・・。
焼物好きのカーク夫妻と展示品の写真を沢山撮った。せともの屋の屋敷跡からのまとまった発掘という
ことで伝世品でも窯跡からの発掘でもない、志野・唐津や信楽・備前もまざる。窯道具もある。織部好き
ならば是非見ておくべきだろう。権力の移行期に思想統制的背景によって、突然破棄されたともいわれ
る、一群である。

                                                                   これは手付きの平向付。アーチ状の持ち手が欠損しているのが判るでしょうか。伝世のもので形などを
変えて寄せ5客の組物にしたのがあるけれど、やはり希少種だと思います。絵は考えて描いたというよ
りも「トリアエズ波で・・・」といった軽さが押し付けがましくなくていい。食器棚では邪魔者扱いされ
そうだが、これ一つあれば色々楽しめるはずだ。個展に出したりすると、意外に手に取る人が多い。
10/14追記